「伊東商工会議所」「伊東観光協会」「伊豆高原観光オフィスIKO(アイコ)」と、異なるフィールドで活動する3人の「地域おこし協力隊員」がいる。移住者が2人、地元出身が1人という異なる背景を持つ3人だからこそ見えてくる伊東の姿があるのではないか。そんな思いから、伊東経済新聞では3人による対談企画「伊東の今とこれから」を全3回にわたって企画した。
「人を知る」「地域を深掘る」「未来を考える」の3回構成で、伊東の「魅力」「課題」「これから」について本音で語ってもらう。「商工」「観光」それぞれの現場から見える伊東を突き合わせることで、普段は語られにくい伊東の一面が浮かび上がることを目指す。地域おこし協力隊の活動を広く知ってもらうとともに、読者にとっても「地元の当たり前を見つめ直すきっかけになれば」、というのがこの企画の狙いだ。
第1回のテーマは「なぜ、あなたは伊東にいる?」。
東京都出身で伊東商工会議所の松田陵さん(34)、千葉県出身で伊東観光協会の吉村優さん(28)、伊東出身で伊豆高原観光オフィスの御手洗輝さん(24)に、これまでの歩みや伊東に来たきっかけ、現在の活動について聞いた。聞き手は谷副編集長。

――まずは、これまでどんな仕事をしてきたか教えてください。
吉村 2025年7月に着任しました。それまでは東京で法人向けにソフトウエアを提供する会社に勤めており、副業で「東京のデートスポット」を紹介するインスタグラムをやっていて、1年間で8万人まで伸びたんです。それを仕事にできたらと思っていた時に、「地方で困っているところで力を発揮したい」と考えて、地域おこし協力隊の特設サイトから応募しました。

御手洗 伊東市八幡野出身です。2025年4月に着任しました。中学3年生までは伊東で過ごし、高校進学を機に東京へ。その後、高校卒業後は横浜で2年間、社会人として働きながら暮らしていました。そんな中、知人を通じて地域おこし協力隊の制度を知ったことをきっかけに、地元・伊東へ戻ってきました。いわゆるUターンになります。

松田 2026年6月に着任しました。僕は知人の紹介です。東京では介護やIT、飲食といろいろな仕事をしていてきました。その時に伊東で清掃のボランティア活動をやってる方がいて、その手伝いをしている中で募集を教えてもらいました。今まで週5で仕事をすることをあまりしてこなかったので、今は良い刺激になってます。

――現在はどんな活動をしていますか?
吉村 今は伊東市の公式観光SNSアカウント(@itouji_official)の運営と、観光協会の特集ページの更新などをしています。あとは観光協会に属していますので、町のイベントの設営などの設営にも携わらせていただいています。また、今年7月に僕自身が法人化しました。友人数人と「宿の清掃や運営代行」「別荘管理」も手がけています。地域おこし協力隊の任期が終わっても伊東で仕事を続けていくつもりです。
御手洗 僕は伊東の南部エリアを中心に、「教育旅行の受け入れ」「ペットツーリズム」「ボッチャ」の普及活動などに取り組んでいます。ペットツーリズムでは、IKOとして「伊豆高原わんわんマルシェ」などのイベントの企画・運営に携わっています。将来的には伊豆半島を「イヌ半島」として盛り上げていきたいという思いがあり、先日行われた「わんわんサミット」では、伊豆半島のペット関連事業者の皆さんに集まっていただき、事業者同士のつながりや連携を深める機会づくりにも取り組んでいます。そのほか、SNSやブログなどを活用した情報発信にも、今後さらに力を入れていきたいと思っています。
吉村 御手洗さんは地域おこし協力隊というより、もうIKOの社員みたいだよね(笑)
松田 僕は商工会の会員事業者の情報発信を主に行っています。正直SNSを今まであまり使ってこなかったのもありますし、動画編集も未経験だったので、覚えることばかりです。吉村さん教えてください (笑)。あとは、商工会内の事務作業などをなるべく手伝わせていただいています。
谷 僕も実は出身は栃木県で移住者です。伊東の方々の印象が、全体的に「発信」が苦手なイメージがあって、ITの会社を経営している中で、「こういったメディアがあれば、もっと伊東が盛り上がるのでは」と考えて伊東経済新聞を立ち上げました。ITリテラシーに強くなってもらいたいです。
御手洗 僕もSNSをあまり使ってこなかったので、今、苦戦してます。やはり伊東出身だからですかね(笑)。吉村さん教えてください(笑)。

――伊東に来る前は、伊東にどんなイメージを持っていましたか?
松田 僕は正直、伊東のイメージは特になかったんです。温泉が有名だということも、来てから知りました(笑)。
御手洗 僕は両親が伊東でペンションをやっていたので、毎日露天風呂に入るのが当たり前でした。ただ、戻ってきてから商店街などが廃れているのを見て、地元で何かしたいと思うようになりました。やはり一度伊東を離れてみると、伊東の良さや、逆に問題点も見えてきて、このままではいけないと思っています。
吉村 伊東は歴史のある町で、正直、地域の方の協力が得られるのか、自由に活動ができるのか不安でした。けど実際に活動をしてみると、人が本当に良くて、業務に専念する事ことができています。地域おこし協力隊という活動も、市からガチガチのミッションを課されているわけでもないので、そのおかげで僕にとっては逆に能動的に活動ができており、毎日が楽しいです。
――地域おこし協力隊に着任して一番大変だったことは何ですか?
松田 先ほども話しましたが、今までSNSをあまり活用していなかったのと、動画編集などもやったことがなかったので覚えるのが一番大変です。地域おこし協力隊の任期は3年と決まっているので覚えるだけで終わらないよう頑張ります。
吉村 僕は特に夏のイベントの設営をしながら日々のSNSの更新などを行うことが大変でした。めっちゃ日焼けしました。あとは、伊東市のSNSアカウントを運営しているのもあって、撮影依頼をとても多く頂いています。本当は全部紹介して差し上げたい。けどなかなか日々の業務の中でその全てを取り上げることが難しく、お断りをしなくてはいけないのが心苦しいですね。
御手洗 IKOの業務の中で教育旅行の手配があります。特に修学旅行の企画は2年前から行っているので、今は2028年のやり取りをしています。関係する学校の先生方、宿泊施設の方、体験施設の方とのやり取りも大変ですし、何より子どもたちの安全を第一に考えなければいけないことが責任もあり大変ですね。今やりがいもあって本当に楽しいのですが、まだまだやりたいことも多く、日々の業務でなかなか先に進められないのが現状です。旅行関係の経験のある方に入ってきてもらいたいです。

――3人は普段から交流はありますか?
吉村 この前3人で飲みに行きました。熱海の地域おこし協力隊の人たちとも飲みに行ったことがありますよ。
松田 今後何をしていくか、どうしていくか話したり情報交換をしました。
――3人は仲は良いですか?
松田 仲良い…普通です(笑)。
谷 今度混ぜてください(笑)。
――ここまで、ありがとうございました。
3人の話からは、それぞれ異なる背景を持ちながらも、共通する姿が見えてきた。東京から移り住んだ吉村さん、地元にUターンした御手洗さん、さまざまな仕事を経て伊東にたどり着いた松田さん。着任のきっかけや不安はそれぞれだったが、実際に活動を始めてからは「地域の人の良さ」「業務に専念できる環境」に助けられながら、日々の忙しさと向き合っている点は共通していた。特に3人とも口をそろえたのが「発信」の難しさだ。SNSやブログの更新は業務の一つでありながら、日々の仕事に追われてなかなか手が回らない現状がある。移住者・地元出身という違いを超えて、伊東の「今」を支える3人の姿が浮かび上がった回となった。
次回は「伊東って、本当はどうなんだろう?」をテーマに、3人それぞれの視点から見える伊東の魅力や課題に迫る。
対談場所「トスカナ・イタリアンハウス」について

住所 伊東市中央町3-5 ヤマヤビル2F
交通 伊豆急行線 伊東駅より徒歩5分
30年以上続く老舗のイタリアンレストラン。伊東駅前の商店街2階にあり、ワタリガニのトマトソースパスタや大きなピザなど、本格イタリアンが味わえる。ランチはデザート付きのセットも人気で、地元の人にも観光客にも親しまれている一軒。
